中堅鍼灸師のマツハリ先生と健康マニア宇宙人のキュウタロウ君のドタバタ鍼灸問答です。わかりそうでわからない、鍼灸の世界を垣間見てみましょう!
#6 五臓六腑? 六臓六腑?
キュウタロウ : マツハリ先生には経絡(けいらく)って言葉について説明してほしいな。
マツハリ先生 : そうだね。どうしても鍼という独特な道具に興味が行ってしまうけど、鍼灸に大切なのは考え方。そしてその中でも経絡というのは大切な考え方のひとつだからね。
キュウタロウ : そもそも経絡って何なの?
マツハリ先生 : 経絡は気の流れ道って考えればわかりやすいかな。
キュウタロウ : 血管とか神経じゃないの?
マツハリ先生 : 違うんだよ。血管や神経とは別に存在すると考えられているけれど、人体を解剖しても見つかることはないんだよ。
キュウタロウ : 過去に世紀の発見って話題になったことがあるらしいね。
マツハリ先生 : よく知っているね。ボンハン学説ってヤツだね。結局、デマだったようだけどね。誰でも西洋医学的に解明した方がいいと思うので、そのような憶測から誤解を招く発表になったんだろうね。
キュウタロウ : 血管とか血液なら聞いたことあるけど、経絡とか気とかはなかなか聞かないよね。
マツハリ先生 : そうだね。経穴、つまり一般的に言うツボっていう話しはなかなか聞かないね。
キュウタロウ : 経絡っていうのは気の通り道って言ったよね?それっていくつあるの?
マツハリ先生 : 経絡は全部で12個ある。でもね、この12個のそれぞれの終わりが次の経絡につながっているんだ。そう考えると1本の大きな流れになっているってみることもできるんだよ。
キュウタロウ : 循環しているってこと?
マツハリ先生 : そうだね。ところで、なぜ12個か興味あるだろ?
キュウタロウ : もったいぶらずに教えてよ。
マツハリ先生 : そうだね。まず経絡っていうのは、鍼灸の世界では一般的に臓腑経絡説っていう学説なんだよ。まぁ誰が決めたか正確にはわからないけど、長い歴史を経てそのような考え方が出来上がったわけ。他にもいろいろな考え方があるけど、別なときに話すとするね。その臓腑経絡説っていうことがかなりヒントになるんだよ。
キュウタロウ : 臓腑経絡説ってことで経絡の話しをするんだから、臓腑がヒント?
マツハリ先生 : そうなんだ。お酒を飲む人なら、お酒を飲んで言うセリフを知っているはずさ。
キュウタロウ : …わからない。僕お酒飲めないし。
マツハリ先生 : 「五臓六腑にしみわたる」だよ。
キュウタロウ : あぁそれなら時代劇で見たことあるかもっ。
マツハリ先生 : 五臓六腑っていうのは、内臓のことなんだ。ここからすべての臓器とそれぞれに経絡がつながっていると考えて12経絡なんだよ。
キュウタロウ : ちょっとちょっと、マツハリ先生おかしなこと言わないでよ。五臓六腑じゃ11個のはずじゃないか!?
マツハリ先生 : そっか。誤魔化すには無理があったね。もう少し説明を補足しなきゃね。
キュウタロウ : 変なところで手を抜かないでよ。
マツハリ先生 : 五臓六腑の五臓っていうのは、肝、心、脾、肺、腎っていう五つを言うんだよ。
キュウタロウ : 肝?肝臓じゃないの??
マツハリ先生 : 東洋医学の内臓と西洋医学でいう内臓を区別するために、わざと東洋医学的に言ったんだよ。肝臓って言っちゃうと、ごちゃごちゃしちゃうから、同じものでも言い方が少し変わると思って聞いていてね。
キュウタロウ : なんか、ややこしい気がする。
マツハリ先生 : 大丈夫。君ならわかるって。その五臓が実は六臓だったんだよ、という話しをするんだけど、その前に五臓の説明も必要になるから聞いていてね。
キュウタロウ : うん。
マツハリ先生 : まず、肝臓と肝っていうのは、ちょっと同じようだけどちょっと違うってことはいいね。次は脾についてだ。脾っていうのは脾臓のことなんだけど、脾臓という臓器は西洋医学には無いんだよ。
キュウタロウ : 脾臓ってないの?
マツハリ先生 : そう。しいて言うなら、膵臓(すいぞう)。ただ東洋医学でいう脾っていうのは消化器系全体って考えるんだよ。
キュウタロウ : わかったような、わからないような。
マツハリ先生 : 続けるね。肺と腎はそのまま覚えても構わない。そこで、本題の足りない1臓についてだ。
キュウタロウ : それそれ。
マツハリ先生 : 心は皇帝、あるいは王様って考えられるくらい重要な臓器って考えたわけだ。
キュウタロウ : なんかわかる気がする。
マツハリ先生 : その王様に直接お願いすることはなかなかできないんだよ。執事や大臣が王様に必要な仕事だけを厳選して、王様の負担を減らしていた。
キュウタロウ : そうだね。王様が一番忙しくなったら大変だもんね。
マツハリ先生 : そういう意味で、内臓のなかで王様である心を守る存在として心包(しんぽう)っていう臓器があるって考えたんだ。これが五臓六腑じゃなくて六臓六腑の正体なんだよ。
キュウタロウ : なんとなく納得だね。心はそれくらい大切だって考えたんだね。
マツハリ先生 : ちなみに六腑も説明しておいた方がいいね。六腑とは胆、小腸、胃、大腸、膀胱、そして三焦だよ。
キュウタロウ : うん???
マツハリ先生 : あれれ、しっかり聞いているみたいだね。三焦ってことで疑問に思ったんだろうね?
キュウタロウ : そうそう。三焦っておかしな名前は聞いたこと無いよ。
マツハリ先生 : 実はこの説明も難しいんだけど、脾よりももっと大きな意味で消化器系って考えたらいいかな。エネルギーを分配する機能があるっていうことさ。とりあえず、ここでは三焦はそれくらい曖昧な理解にしておいてよ。
キュウタロウ : なんか、東洋医学ってそういうのが多いね。
マツハリ先生 : そのうち納得する時がやってくるから我慢してね。
キュウタロウ : うん。わかったよ。
マツハリ先生 : ちなみに臓腑の違いっていうのがあるんだよ。
キュウタロウ : 臓と腑って違うの?
マツハリ先生 : あぁ違うさ。臓っていうのは、中身が詰まっているもの。腑っていうのは中身に空間があるものを言うんだよ。
キュウタロウ : へぇーそうなんだ。。。
マツハリ先生 : 厳密に言うと心を心臓って考えちゃうと空間があるじゃないかって話しになるけど、臓は詰まっていて腑は空間があるって理解しておいて欲しいんだ。
キュウタロウ : そういう違いって意味があるの?
マツハリ先生 : まぁやがてわかる深い話しに関係するから、今は、とりあえず覚えておいてよ。
キュウタロウ : さてさて、これで五臓六腑、いや六臓六腑の12個がでそろったね。
マツハリ先生 : ひとつの臓や腑につき、ひとつの経絡が関係している。それで12経絡がある。臓腑はそれぞれの経絡に流れる気、正確には気と血だから気血っていうんだけど、それぞれに養われているんだよ。
キュウタロウ : これで12経絡ってことね。
マツハリ先生 : 臓腑経絡説はその12経絡に東洋医学的な陰陽という考え方をくっつけて呼んでいるんだ。この説明はいづれするとして、陰陽それぞれに三段階がある。太陽、陽明、小陽それと太陰、厥陰、少陰というんだよ。そして配当されている臓腑と合わせるのが経絡の正式名称になる。例えば太陰肺経とか太陽膀胱経という言い方になる。12経絡の呼び名についてはメモに書いておくね。まぁ一般的には何経かっていうの言葉だけで十分わかるので、肺経とか膀胱経って言うけどね。
キュウタロウ : 覚えることがたくさんあるね。
マツハリ先生 : さらに言うと、今言った十二経絡は正経というんだ。だから十二正経って呼ぶんだよ。
キュウタロウ : わざわざ正経っていうからには、他のものもあるの?
マツハリ先生 : 鋭いね。実は、、、あるんだよ。だけど、今日はかなり長く説明したからまた違うときにお話するね。
キュウタロウ : ふぃー。先は長そうだね。
マツハリ先生 : なんども思い出しながら進めていけば楽しくなるから心配ないって。
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